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命をいただく

先ほどTBSの情熱大陸を見た。
山形のイタリア料理店オーナーシェフ奥田政行氏を紹介したものだ。
日本料理の料理人を父に持ち素材の味を生かす事めざしていたが、イタリア料理を勉強し山形の味を生かすにはイタリア料理がもっとも適していると考えたという。食材が豊かな土地で腕のいい料理人が店を構え、その料理を食べたい人はその場所に行くという形態はヨーロッパでは普通の事だという。
イタリア料理の世界では有名な落合努氏が奥田シェフの店に予約を入れた。落合努氏は僕も以前氏の書いた本を持っていたが日本のイタリア料理界では五本の指に入る人物だ。
イタリア料理は確かに素材を生かす料理法がたくさんあるが、通常味を補う「スーゴ?ディ?カルネ」「ブロード」「トマトソース」などを常用する。だが、奥田氏はそれらを普段から使用しないのだという。
テーブルに付き後輩をいたわる穏やかな笑顔の奥田氏、最初に出された一皿を見て僕は密かににやりとした。
奥田氏にとっては真剣な一皿め、ブリを一切れ真っ黒な皿にのせ塩をひとつまみぱらぱらとまきオリーブオイルらしきものがスジ状にかかっているだけ、説明によると満月の日の塩を用いてるのだという。
ナレーションは不機嫌そうに無言になる落合氏について伝えている。
しかし誰もがそれはその料理のすごさを味わったプロの表情だと気がついただろう。
落合氏へのメインとして奥田氏が用意していた素材はほりたてのタケノコ。水だけで茹で、タケノコを好んで食べる地元イノシシで作ったパンチェッタを用いてリゾットに仕立ててある。落合氏はタケノコを水だけで茹でた事、パンチェッタが普通のものではない事などをにこやかに言い当て食事を終えた。
食は地元でとれた天恵を真心を持って調理していただく、だからこそ農も料理も業とすべきじゃない、そんな話を聞いた事がある。
しかし、味覚も芸術文化の一つと考えるならそうしたプロは不可欠なのかもしれない。