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形態のストーリー

工業デザイナーはしばしば角Rを問題にします。
角Rとは成型品などの丸みのことで、以前僕が関わっていた頃は時代ごとに流行のRなどもありました。
乗用車の外観はその構造上フォルムやディテールがかなり自由になるためそうした流行の最先端だったりします。最近までの流行は比較的ふっくらと丸みを帯びたフォルムとシャープなエッヂ(角Rが小さい)のディテールが特徴的だったと思っています。
以前中途半端にトヨタデザイン - ことば:こころでトヨタデザインに少しばかりケチを付けましたが、全般にトヨタ車のディテールは角Rがほとんどまとまっていないと感じていました。
人は人の顔に美醜とは無関係に味や物語を読みとっていることから分かるようにもののフォルムから意識している以上の情報を入力していると思います。
形態の成り立ちには彫像のように引き算で成り立っているものと塑像のように足し算で形成されるもの、それらが合わさって形態に物語を含んでいるものとがあります。われた石は角張っているけれど川の流れで磨かれた石は丸かったり、陽光を受ける目的を持ってのびる枝葉はとがって広く見る見るふくらむ果実は丸い。小さい赤ん坊は丸っぽく充実した成人は相対的にシャープになる。道具のように目的をもって作られたものは用の美をそなえて目的が明確で美しい。
そうした意識しないままにディテールから受けているメッセージがある中で制御されないままのディテール:角Rをもつ車のスタイルにたいして特別な印象もストーリーも感じないなら、いくら目新しい形状の仕掛けがあってもそれに対して愛着を持つのは難しいはずです。反対にフォルムやディテールからその車の個性やストーリーが連想されるものは見慣れるに従ってそれが愛着になってくるはずです。
そんなことを考えながら歩いていたら"ホンダのクロスロード"を目にした。
見ての通り自然のフォルムでは無いけれど窓まわりにCコーナー(面取りの形)が印象的だ。これは実際の機能はないのだろうけれど鉄骨の角にある三角の補強板を連想させ用の美をもってストーリーを訴えている。角Rもジープに代表されるパネル構造を連想させるRで統一されている。
このフォルムがこの先永い時間を経てどういった印象へと変わっていくのかとても楽しみです。