今だから見直すANPO

3月19日に名古屋でANPO(ANPO公式サイト:音が出ます)の上映会が行われました
親しくさせていただいている方が、名古屋でこの上映会をやりたい、監督に会ってみたいという思いで実現したイベントだったので、ほんの少し運営のお手伝いと当日の模様を録画・配信するお手伝いをしたのですが、 とても良い企画だったのでその時に思ったことを書き留めておきたいと思いました。
映画「ANPO」は、60年安保闘争をテーマにした絵画・映画・フォトグラフィ・舞台・歌などの芸術作品とその作者へのインタビューをオムニバス調にまとめたドキュメンタリ形式の映画です。念の為に書き添えると、安保闘争というのは戦後復興も一段落して日本がやっと高度成長期に差し掛かった時期、岸内閣が日米安全保障条約を更新する事を決め、それに対して多くの国民が反対運動を展開したにもかかわらず時限立法で成立してしまった事案です。
上映会は東北関東大地震の一週間後、果たして戦争だとか闘争だとかそうしたことに集中できるのかという不安を抱きつつ頭の中を切り替えなければと思ってオープニングタイトルを見ていました。
しかし、始まるとパワフルな芸術作品と対照的に淡々と語りかける作家の方々の話に引き込まれるのでした。 映像の中には、このところニュースで流れてくる東北の惨状と見紛うような焼け野原も出てきます、そう、戦争も天災も普通の人の生活に対する脅威としては同じ物、違うのは憎む相手がいるのかそうでないかと言う事。 憎むべき相手がいることはわずかでも救いになるのかそうでないか、それは人によって違うのだろうと思います。 しかし、このANPOで描かれた芸術作品には確かに憎しみが込められています、多くの作品が暗いトーンで描かれています、多くの作品で人はグロテクスにデフォルメされます。救いようのない心の痛みにとっての憎むべき相手と未来へ行こうとする時のその存在の意味は全く異なります。
ところで、先にも紹介したように日本全国を巻き込むほどの安保闘争は、結果として失敗に終わりました、実際に運動に参加した人の中からたくさんの負傷者が出ました、死者も出ています。実際に参加していなくても多くの国民は安保反対を支持していました、それでも日本政府は現在も続いている日米安全保障条約を更新しました。
この政治システムは今現在も何も変わっていません、それは敗戦後から今にいたるまで何も変わらず連続しているということに、改めて愕然とするのです。 映画の中でも安保闘争に参加した人々は、法案成立と共に「さて、闘争は終わった」といい、何もなかったかのように其々の社会生活に戻って行くのです。
しかし、加藤登紀子さんが国会議事堂をぐるりと取り囲む群衆を思い返して「これだけの仲間がいるんだ、うれしい!と感じたんです」と語っています。そして、今でもなおいわゆる国民世論を重視する根底にはこの安保闘争が生きているのだろうと信じたいのです。
ところでこの企画自体は、その友人が純粋に「やりたい!」と思って始まったのですが、予定の日が近づくにつれこの3月19日は、ここ名古屋の三回に渡る空襲の中で特にひどかった日にあたり、その時を知る多くの人が強く記憶を呼び起こされたようです。
深みのある映画作品を見てみんなでそれについて語り合うのは楽しいですね この時の模様は岩上さんのチャンネルで公開されています。
このANPOはすでにDVDになっています>ANPO